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インドの二大叙事詩の一つ、マハーバーラタ。「とても長い物語」と聞いたことはあっても、どれくらい長いのか、どんな話なのか、どこから知ればいいのか迷ってしまう人も多いのではないでしょうか。
この記事では、ブリタニカ百科事典の「Mahabharata」の項目(シカゴ大学名誉教授ウェンディ・ドニガー氏の執筆)をもとに、マハーバーラタの長さと構成、あらすじを5つのポイントにまとめます。英語の説明の日本語は、この記事での訳です。後半の、マハーバーラタを楽しむ方法は、この記事の提案です。
※神話や叙事詩の内容は、版や地域、伝統によってさまざまな伝え方があります。この記事で紹介するのは、ブリタニカの説明にもとづく一つの整理です。
マハーバーラタとは
古代インドの二大叙事詩の一つ
ブリタニカでは、マハーバーラタは古代インドのサンスクリット語の二大叙事詩の一つで、もう一つはラーマーヤナだと紹介されています。名前は「バラタ王朝の大叙事詩」という意味だと説明されています。
ダルマの書であり歴史でもある
マハーバーラタは、紀元前400年から紀元後200年ごろのヒンドゥー教の発展を知る重要な資料とされ、ヒンドゥー教徒にとってはダルマ(ヒンドゥー教の道徳の法)の書であると同時に、歴史(イティハーサ、文字どおりには「そのようにあったこと」)とみなされていると説明されています。
マハーバーラタを知る5つのポイント
ここでは、ブリタニカの説明から、マハーバーラタについて押さえておきたい点を5つにまとめます。
1. 18のパルヴァン(巻)に分かれる
マハーバーラタは、18のパルヴァン(parvan、巻・部)に分かれ、さらに「ハリヴァンシャ(ハリ、つまりヴィシュヌの系譜)」という補遺がついていると説明されています。
2. 約10万の二行詩
マハーバーラタは、ほぼ10万の二行詩(カプレット)からなるとされています。ブリタニカでは、これは『イーリアス』と『オデュッセイア』を合わせた長さの約7倍にあたると説明されています。
3. 作者はヴィヤーサと伝えられる
一人の人物が書いたとは考えにくいとしつつも、作者は伝統的に聖仙ヴィヤーサとされていると説明されています。ヴィヤーサは、物語の中にもカウラヴァとパーンダヴァの祖父として登場します。
4. 現在の形は400年ごろ
マハーバーラタは、紀元後400年ごろに現在の形になったと説明されています。中心となる英雄の物語のまわりに、神話や教えの話が数多く集められているのが特徴です。
5. 中心はいとこ同士の争い
物語の中心は、王位をめぐる二つのいとこの一族、カウラヴァ(ドリタラーシュトラの息子たち)とパーンダヴァ(パーンドゥの息子たち)の争いです。争いは、クルクシェートラの野での大きな戦いへと続いていきます。
5つのポイントの早見表
| ポイント | ブリタニカの説明 |
|---|---|
| 構成 | 18のパルヴァン(巻)+補遺「ハリヴァンシャ」 |
| 長さ | 約10万の二行詩(『イーリアス』と『オデュッセイア』の約7倍) |
| 作者 | 伝統的に聖仙ヴィヤーサとされる |
| 現在の形 | 紀元後400年ごろ |
| 中心の物語 | カウラヴァとパーンダヴァの王位をめぐる争い |
表の内容は、ブリタニカの「Mahabharata」の項目をこの記事でまとめたものです。
あらすじをたどる
王位を譲られなかった兄
物語は、二人の王子のうち兄のドリタラーシュトラが目が見えないために、父王の死後、弟のパーンドゥが王になるところから始まります。
神々の子として生まれた五人の兄弟
呪いのためにパーンドゥは子をもうけられず、妻のクンティーは、パーンドゥの名で神々に子を授けてくれるよう願います。その結果、ダルマ神からユディシュティラ、風の神からビーマ、インドラからアルジュナ、アシュヴィン双神から双子のナクラとサハデーヴァ(パーンドゥの二番目の妻マードリーの子)が生まれたと説明されています。
ドラウパディーとクリシュナ
いとこ同士の敵意と嫉妬から、パーンダヴァは国を離れることになります。追放のあいだに、五人はそろってドラウパディーと結婚し、いとこのクリシュナと出会います。クリシュナはその後もずっと五人の友であり仲間であり続けます。
さいころ賭博と12年の追放
パーンダヴァは国に戻りますが、ユディシュティラがカウラヴァの長兄ドゥルヨーダナとのさいころ賭博ですべてを失い、今度は12年間、森へ追放されます。
クルクシェートラの戦いとその後
争いは、クルクシェートラの野での一連の大きな戦いで頂点を迎えます。カウラヴァはすべて滅び、勝った側でも生き残ったのは五人の兄弟とクリシュナだけでした。その後、五人はドラウパディーと一匹の犬とともにインドラの天界を目指しますが、一人ずつ倒れ、天界の門にたどり着いたのはユディシュティラだけだったと説明されています。
あらすじの流れを一覧で見る
| 段階 | 出来事(ブリタニカの説明より) |
|---|---|
| 始まり | 目の見えないドリタラーシュトラに代わり、弟パーンドゥが王に |
| 誕生 | 神々の子として五人のパーンダヴァが生まれる |
| 最初の追放 | ドラウパディーとの結婚、クリシュナとの出会い |
| 二度目の追放 | さいころ賭博に負け、12年間森へ |
| 戦い | クルクシェートラの戦いでカウラヴァが滅びる |
| 結末 | ユディシュティラが天界の門へ。のちに兄弟やドラウパディー、かつての敵とも再会 |
表は、ブリタニカの説明をこの記事で段階に分けて整理したものです。
巻の中にある有名な部分
第6巻のバガヴァッド・ギーター
ブリタニカでは、バガヴァッド・ギーターは第6巻にあると説明されています。戦いが始まろうとするときに、クリシュナがアルジュナに与える倫理と宗教についての助言からなる部分です。
第13巻と第14巻
ほかにも、ナーラーヤニーヤ(第13巻の一部)、アヌギーター(第14巻)、そしてハリヴァンシャは、クリシュナをヴィシュヌの化身とする初期のヴィシュヌ派の神学の重要な資料だと説明されています。
| 部分 | 位置 |
|---|---|
| バガヴァッド・ギーター | 第6巻 |
| ナーラーヤニーヤ | 第13巻の一部 |
| アヌギーター | 第14巻 |
| ハリヴァンシャ | 補遺 |
ダルマを語る物語
さまざまな立場の行いの決まり
ブリタニカでは、マハーバーラタは何よりもダルマ(行いの決まり)を説き明かす作品だと説明されています。王の正しい行い、戦士の行い、災いの時代を生きる人の行い、そしてモークシャ(輪廻からの解放)を求める人の行いなどが語られるといいます。
「微妙」なダルマ
マハーバーラタは、ぶつかり合うダルマの決まりがとても「微妙」で、ある場面では英雄がどの選択をしても、何らかの形でダルマにそむいてしまうことを繰り返し描いていると説明されています。正しさが一つに決まらない難しさが、物語の大きなテーマになっているのです。
宗教の移り変わりも映す
マハーバーラタが形づくられた時代は、ヴェーダの祭式から宗派的なヒンドゥー教へ移り変わる時期であり、仏教やジャイナ教とも、ときに友好的に、ときに対立しながら交流した時代だったと説明されています。作品の部分ごとにさまざまな信仰が表れているといいます。
アジア各地に伝わるマハーバーラタ
石の浮き彫りや細密画に
マハーバーラタの物語は、南アジアと東南アジアの各地で、サンスクリット語や各地の言葉で、書かれたり語られたりして伝えられてきたと説明されています。カンボジアのアンコール・ワットやアンコール・トムの浮き彫り、インドの細密画にも、その場面が描かれています。
ペルシア語訳『ラズムナーマ』
ブリタニカでは、ムガル帝国の皇帝アクバルが命じた、マハーバーラタのペルシア語による抄訳・翻案『ラズムナーマ(戦いの書)』(1584〜86年)も紹介されています。よく研究されている挿絵入りの写本は1598〜99年に完成し、161枚の絵があり、北アメリカやヨーロッパ、インドの各地に分かれて所蔵されていると説明されています。
マハーバーラタを楽しむ方法
ここからは、ブリタニカの説明をもとにした、この記事の提案です。
まずは人物関係を図にする
カウラヴァとパーンダヴァ、五人の兄弟の父である神々、ドラウパディーやクリシュナなど、登場人物はとても多くなります。最初に人物関係を図にしておくと、物語が追いやすくなります。
ギーターから読んでみる
物語全体はとても長いので、第6巻のバガヴァッド・ギーターのように、よく知られた部分から読んでみるのも一つの方法です。
抄訳や再話で全体をつかむ
全18巻を読み通すのは大変です。まずは抄訳や子ども向けの再話などで全体の流れをつかみ、気になる場面から原典の翻訳に進むのもおすすめです。
美術作品から入る
アンコール・ワットの浮き彫りやインドの細密画など、マハーバーラタの場面を描いた美術作品から入るのも楽しい方法です。絵を見てから物語を読むと、場面の情景が思い浮かびやすくなります。
ラーマーヤナと比べる
もう一つの叙事詩ラーマーヤナと、長さや登場人物、物語の進み方を比べてみると、インドの叙事詩の世界がより立体的に見えてきます。
マハーバーラタのよくある質問
マハーバーラタは何巻あるの?
ブリタニカでは、18のパルヴァン(巻)に分かれ、補遺としてハリヴァンシャがあると説明されています。
どれくらい長いの?
ほぼ10万の二行詩からなり、『イーリアス』と『オデュッセイア』を合わせた長さの約7倍と説明されています。
作者は誰?
伝統的に聖仙ヴィヤーサとされていますが、一人の人物が書いたとは考えにくいとされています。
戦いは本当にあったの?
ブリタニカでは、物語の中心となる戦いの年代や、戦いが実際にあったかどうかについては、さまざまな議論があると説明されています。
物語の中心はどれくらいの分量?
ブリタニカの冒頭の要約では、中心の筋は作品全体の約5分の1にすぎず、残りはさまざまな神話や伝説、宗教や道徳の教えだと紹介されています。
クルクシェートラはどこ?
ブリタニカでは、クルクシェートラの野はデリーの北、ハリヤーナー州にあると説明されています。
バガヴァッド・ギーターとの関係は?
バガヴァッド・ギーターは、マハーバーラタの第6巻にある部分だと説明されています。
マハーバーラタの全体像を知って物語を楽しもう
マハーバーラタは、18のパルヴァン(巻)と補遺ハリヴァンシャからなる、約10万の二行詩の叙事詩です。ブリタニカでは、作者は伝統的にヴィヤーサとされ、紀元後400年ごろに現在の形になったと説明されています。物語の中心は、カウラヴァとパーンダヴァのいとこ同士の争いと、クルクシェートラの戦いです。人物関係を整理しながら、気になる巻から物語にふれてみましょう。